Going over the night

イベントを振り返る目的で作った雑ブログ

fripSide Phase2に青春を捧げた13年~Phase2 Final Arena Tour感想~

 2010年、僕は自分の人生で最高の音楽を知った。

 

 インディーズから「5bp」でメジャーデビューを果たし、その後前任ボーカル(nao)の卒業から新ボーカル(南條愛乃)を迎え、レーベル「ジェネオン・ユニバーサル(現:NBCユニバーサル)」で再始動したユニット、「fripSide」。

アニソン界に文字通りの革命を引き起こし、去る2022年4月に南條愛乃の卒業という形で13年の活動に1つの区切りを付けた。

これはfripSideファンの1人である筆者の出会い(2010)から第2期の完結(2022)までを振り返る、卒業ツアーの感想を兼ねた雑記です。

10年分の思い出を書き連ねているため、長文となります。

 

 

出会い(2010~2011)

 当時高校1年だった筆者は自営業を営む父親のバイトをするため、近所のワークマンに来ていた。

父から作業着の採寸を受けながら有線放送に耳を傾けていると、やけに印象に残るメロディと歌声が聞こえてきた。

テレビでも聴いたことが無い曲の正体を探る事で頭がいっぱいとなった自分は、帰宅後、ノートパソコンを立ち上げ、Youtubeにアクセスした。

 

 小学生の頃に「ガンダムSEED」でT.M.Revolutionに触れ、「ハヤテのごとく!」でKOTOKO(I've Sound)を知り、すっかり電子音楽が好きになった自分は、感性的にアニソンのランキング動画を検索して回り、正体を突き止めた。

 

LEVEL5-judgelight-/fripSide

 

 今やサブスクリプションや公式チャンネルで音源自体が公開される時代だが、当時はCDを買う以外の方法でフル音源を聴く事は難しく、大っぴらに言えない方法で音源をウォークマンに入れてこれを繰り返し再生して日々を過ごし始めた。でもあの頃割とやってる人いたと思うんだ 後にちゃんと円盤は買った。

 この時に「only my railgun」も知ったが最初の衝撃は何物にも変えがたく、今でも自分の中ではLEVEL5の方が上位にランク付けされている。

 

 OP主題歌に起用されていたアニメ「とある科学の超電磁砲」にも触れることになるが、どんな作品か調べるとスピンオフと知り、原作である「とある魔術の禁書目録」からアニメを見て、余裕がある時はブックオフで原作小説を買って読書時間に読みふけり、あまりにも広すぎる鎌池和馬先生の世界観に没頭した。

 

 2011年の春。それまでに3rdSG「future gazer」や後の推し曲が収録された1stAL「infinite synthesis」が発売されるも、情報入手手段に乏しい時代だったからかこの時はまだfripSideへの認知力が低いまま所謂「曲は好き」の範囲だった。

たまたまコンビニで読んでいたサンデーに目を引く情報があった。「劇場版 ハヤテのごとく! Heave is a Place on Earth」である。

主題歌がfripSideと知り、好きなもの×好きなものなら絶対観るでしょ!と期待でいっぱいになり、同時上映だったネギま!を履修しつつ夏を待った。

公開後、すぐに映画館へ足を運んで鑑賞した。主題歌が流れたのはエンドロール。

 

Heaven is a Place on Earth/fripSide

 

静かなサビイントロから始まり、一気に爽やかな夏を思わせるギターとメロディが突き抜けていく。短縮版なので1番の後に間奏が入り、ラスサビ前のフレーズ

「真っすぐに羽ばたこう 風切る疾風のごとく!」

アニメタイトルを歌詞に盛り込むセンスに痺れた。

内容も主人公(綾崎ハヤテ)目線になっており、映画の展開も相まって今聴いても胸が一杯になってしまう。

音楽を聴くのは当時から好きだったが、ここまで心を撃たれたのは初めての体験だった。

 

 こんな曲を手掛けている「fripSide」は一体何者なんだ。

もっと聴いていたい、このアーティストの曲を、いつかは現地で。

自分が「fripSideのファン」になったのは、今思えばこの時だったのかもしれない。

 

初の現地ライブ、初めての遠征(2011~2012)

 これ以降、積極的にネットやアニメ雑誌などでfripSideの情報を集めるようになった。

南條愛乃さんが地元に来ると知った某TCG社主催ライブへ向かい、当時のマネージャーさんとお話させて貰った事もあった。

 

f:id:okita_Side:20220425203720j:image

マネージャーさんに頂いた明智小衣のラバーストラップ。

 

 2012年秋、fripSide結成10周年記念アルバム「Decade」の発売が決定。

アニメタイアップ以外のfripSide曲を聴くのは初めてで、この時まだ1stALも手に入れていなかったので、同時に購入して一気に聴くことにした。

1度発売延期があったが無事に発売された「Decade」をDVD初回盤で購入。

アルバイトを終わらせ、帰りにブックオフで見つけた「IS無印」を買って帰宅したその日にウォークマンへ取り込んで聞き入る日々が始まった。

 どの曲も素敵なものばかりだったが、今も1番と言える推し曲が「IS無印」収録のこの曲である。

 

trusty snow/fripSide

 

 当時のアルバイトは休日早朝から昼間まで、いわゆる朝番専任の勤務。

早朝から自転車で約1時間ほど離れた名古屋まで通っていた訳だが、起きる時間が4時とやたら早かった。

目覚ましで起きて、準備を済ませて自転車で名古屋まで向かう。それまでは普通の土日休日学生だったため、結構しんどいと感じていた。

 そんな時耳に入れていたのがfripSideのアルバムで、中でもお気に入りだったのが「trusty snow」である。

電子音が年中問わず肌寒い早朝の空気に良く馴染み、南條さんの歌声から気力を貰える。何度聴いても元気を貰える良曲だ。

 

 この年にはfripSideにもう一つ、大きなイベントがあった。

そう、「fripSide 10thAniversary Live 2012 "Decade"」である。

映像作品として残っている東京公演が初めての現地参加となったのだが、どうしても見に行きたい気持ちを抑えきれず、一般販売チケットを滑り込みで購入した。

旅程含め後先を考えない、初めての一人東京旅行である。

 

 前日の深夜バスに乗り、一路東京まで。新宿で降りて山手線に乗って向かったのは秋葉原であった。

当時から憧れのあったオタクの聖地だったが、早朝に空いている店などある訳もなく、しかも天候は雨。なぜか傘の用意をしておらず、買うという判断もしなかった愚かな学生オタクは結局開店時間帯まで某Mの店のコンセントを占領して携帯電池を温存しつつ仮眠していた。

 この東京旅行でやりたかった事、それはfripSideを見る事と、秋葉原でヘッドホンを買う事だった。

単にイヤホンばかり使ってて耳が痛くなるので、耳穴に負担がかからないヘッドホンが欲しくかったのだ。別にどこでも買えたんだけど。

辺りをうろついてみるが結局ビッグカメラに落ち着き、買ったのは「SONY MDR-MA300」。お値段5,170円(税込)。やたら丈夫で今も家で使用している。

 

 目的を1つ達成したので、いよいよ物販を購入するために複雑な電車を乗り継ぎ、今は無き新木場STUDIO CORSTへ。

新木場駅に着いた時にはまだ小雨程度だったが、物販並んでいる途中から雨脚は強くなっていく。

やっぱり傘を買わず、びっしょびしょで大雨を耐えてようやく物販会場へたどり着いたが、家族へのお土産代を残す必要があって手持ちの余裕はほとんど無く、買ったのはマフラータオルとサイリウム(UO)数本のみ。それでもグッズが買えたことへの充足感がこの時の収穫だった。

 

 その後開場が近づくにつれて雨は止み、夕暮れの強い日差しを浴びながら入場。会場内に入って、スタンディングの雰囲気にそわそわしていると、照明が暗くなる。いよいよその時がやってきたのだ。

 

grievous distance/fripSide

 

 周りが一斉にオレンジの光に染まり、慌ててサイリウムを折った。

この時、サイリウムが「しばらく発光してすぐに消えるもの」だと全く知らずにやったもんだからどんどん暗くなるサイリウムを見て驚き、結局その後は素手で応援することに。ただそんな事は些細な問題だった。

 目の前に、fripSideがいる。南條愛乃八木沼悟志がいる。

ライブそのものの参加は初めてでは無かったが、大体小さなライブハウスで行うアーティストばかりだった為、目の前を覆うオレンジの眩さが新しく、それまで参加したどのライブよりも楽しかったのを覚えている。

ウォークマンを通して聴いていた楽曲の数々が直接聴けた事に感動した。

 それだけではない。アンコール直後、全く聴き覚えが無いイントロが流れてきたのだ。

 

Hesitation snow/fripSide

 

 鍵盤ではなくギターに持ち替えた八木沼さんと共に奏でられる旋律が激しく心を揺さぶる。

新曲だと思い込んでいた当時は曲名すら思い出せず、その正体が所謂「PCゲーム曲」だと知るのはもう少し先の話だった。

 

 終演後、夜行バスに乗るまでの間を過ごした山手線の周回電車の中と、早朝名古屋から所持金が底を尽いていた故に徒歩での帰り道で、余韻が全く抜けずにMDR-MA300の端子をウォークマンに繋げて、DacadeとIS無印をひたすらリピートしていたのを覚えている。

 

限界社会人初期を支えてくれたfripSide(2013~2016)

 2013年春、なんとか高校を卒業して就職することとなり、実家を離れた新生活が始まった。

仕事は昼夜勤の当番制で、夜勤が月2週で挟まる形であった。

結論から話すと、業務内容も夜勤も自分に合わなくなり、日に日に鬱に近い精神状態となっていった。

 そんな日々の支えになっていたのが3rdAL「infinite synthesis 2」、そして金銭に余裕が出来たことで思い切って購入した「nao complete anthology 2002-2009 -my graduation-」(通常版)だ。

 fripSideを調べる中で1期曲に興味が湧き、「the very best(2002~2009)」を大須で発見して購入したこともあってもっと聴きたい欲が増長した結果、2年目のボーナスをはたいてAmazonで購入した。

(今でもじわじわ値が上がっているようで、2022年現在2万を突破している)

 

 CD枚数が多く、時間をかけてじっくりと聴き込んでいったが、2期楽曲より音数が少ないながら尖ったメロディ、かつ哀愁感が全面的に押し出された歌詞を1期ボーカルのnaoさんが歌う1期楽曲にのめり込んでいった。

「come to mind」、今では「Decade」のセルフカバーより原曲の方が好みだ。

 

 もちろんそれだけでは無く、現行の2期楽曲にも好みな曲があって、ライブで披露された時は嬉しかったのを覚えている。

特にこの時期よく聴いていたのはこの曲

scorching heart/fripSide

 

 前述の「Heaven is~」より暑さを想起させる夏の季節、歌詞にある

 

「夏よ 熱くなれ 燃える灼熱の季節に

燻る弱気な想いを 迷いごと焼き尽くして!」

「どうかあと少し 追いかける事を許して

何度も夢見た景色を まだ私は見ていない」

 

のように、挫けそうな夢を持つ人達を鼓舞する応援ソングである。

 

それともう一つ

infinite synthesis/fripSide

 

 満を持してのアルバム名を冠した楽曲。「fripSideを応援している皆を思って書きました」と八木沼さんが話していたのはいつの事だっただろうか。

 何もかもがしんどくなった時はこれを聴いて「安定してきたら絶対ここを辞める」と決意を固めていた、思い出の1曲だ。

 

 またこの頃の自分もライブ参加の際、無謀なスケジュールを組む事が多かった。

2013年に開催されたイベントでのゲスト参加では大トリと知らず10時間に渡る長時間イベントを再入場不可の会場で過ごし、ラストだけ最前に乗り出して応援。バスの終電を逃して親に迷惑をかけた。

同年末のカウントダウンライブでは何をトチ狂ったのか大宮で宿を取らず、ライブ終了後から新幹線が動くまでの間を駅前で過ごし、帰宅後に高熱を出す最悪の正月明けを迎えた。

IS2ツアーでは地元公演の抽選を外し、グッズを買うためだけに夜勤明けから5時間の待機列形成に参加したこともあった。

IS2舞浜、並びに横アリファイナルも前日入りして千葉や都内で遊び、翌日ライブ会場まで行っていたらしい。バイタリティー高すぎでしょ昔の自分。

 

 2015年7月、「PC Game Compilation Vol.2」の発売直前試聴会にも奇跡的に参加できた。

会場には八木沼さんと川崎海さんが居たわけだが、試聴した曲の感想はイベント終了後、八木沼さんとの突発握手会が始まった時に全て吹っ飛んで覚えていなかった。

 当時から自分も手の大きさは周りより大きいと言われていたが、八木沼さんの手の大きさは自分を上回っており、圧倒されたのは鮮明に思い出せる。

この手の大きさであの鍵盤弾いてんの・・・?と、まともにピアノ弾けない身ながらプロの凄さを感じていた。

 

 余談だが、南條愛乃さんのソロ活動初期の握手会にも度々参加していた記録があった。今ではすっかりfripSide単推しという形ではあるが「ごきんじょ(南條愛乃ファンの愛称)」としてオタク活動していた未来もあったのかもしれない。

 

 2016年、15周年記念AL「crossroads」が発表された頃、現職場への転職が決まった事で夜勤の苦痛から解放され、新生活を「infinite synthesis3」と共に乗り越えた。

 

determination/fripSide

 

 新生活の出勤中で一番聴いた曲。既存のルールを壊し、まだ見ぬ未来へ突き進む決意(determination)の歌だ。

「壊してく 絡みつく 錆びついた常識を

この心 思いのまま 真っ白に塗り替えるから」

 

 

fripSideへの興味が薄れ始めた時期(2017~2019)

 この時期はあえてこう書かせていただく。

マンネリ化とも言えるし、軌道に乗ったfripSideを必要以上に追う事をしなかったとも言える。

 転職で金銭的に余裕が無かった中で「FC先行当たったら行く」といった節約の判断や、祝日の概念が無い職の仕事故にスケジュール上参加が出来なかったりといった背景がある。

 

 それでも大きなライブは欠かさずチェックし、FC先行抽選には応募。

fripSide LIVE TOUR 2016-2017 FINAL in SSA-Run for The 15th Anniversary-」

fripSide 15th Anniversary Tour 2017-2018 "crossroads"」 東京2Days・名古屋Day1のみ

これらには参加していたが、時期的にもお目当ては「1期のカバー」や「IS無印・2の曲」だったことは否めない。

IS4ツアーに至っては未参加という状態だった。東京公演は行けたはずだが2日とも別ジャンルのライブビューイングに参加していた。

 

only me and the moon/fripSide

 15th記念AL「crossroads」収録曲のお気に入り。

これに限らず、作詞:南條愛乃 の悲恋曲の切なさたるや筆舌に尽くしがたい。

 

 そんな中でも当時のTwitterで取り分け饒舌だったイベントを二つ挙げよう。

一つ目、2018年八木沼悟志バースデーライブin横浜

二つ目、タイアップ映画「BLACK FOX」について

 

BLACK FOX/fripSide

 

 どちらもfripSide自体の話ではないが、許していただきたい。

特にBLACK FOXについては「劇場版ハヤテ」と同じ好きなもの(東映特撮)×好きなもの(fripSide)だったためかなり期待値を上げていたが、思った以上に伸びずにそのままひっそりと消えてしまったのが今でも悲しい。

 

 八木沼さんバースデーライブではfripSideバンドメンバーに加えて斎藤信也さん、motsuさん、そしてボーカリストとしてIKUさんが登壇。

ハヤテのごとく!(1期4クール目)EDの「木の芽風」や、禁書目録(1期2クール)EDの「誓い言~スコシだけもう一度~」を生で聴けるとは思わず、じっくり聴き入った。

かと思えば後半でm.o.v.eALTIMA楽曲を立て続けに披露され、思わず腿上げを真似してたらスタッフに注意されました。ここショッピングモールの一角でしたね・・・

 

 

 2019年発売の6thAL「infinite synthesis 5」で更に曲の深みが増したなぁ、と中古車ながらも購入したオレンジ色のマイカーでリピート再生しながら、fripSideの未来はまだ安泰だとこの時は信じて疑わなかった。

 

 

コロナ禍によって崩れた”Phese2"10周年、そして卒業発表(2020~2021)

 不安は「fripSide Phase 2 : 10th Anniversary Tour 2019-2020 -infinite synthesis5-」愛知公演の直前に訪れた。

COVID-19(新型コロナウイルス)の流行が国内でもちらほら聞くようになり、ほぼ滑り込みに近い状態で愛知公演が終わった後、感染爆発が各地で起こった。

 2020年4月開催予定だった横浜公演が中止となって、他イベントとの連日参加を予定していた自分はやや落ち込むものの、接触感染の危険が減ったことへの安堵が勝っていた。

愛知公演で一足先に「final Phase」を生で聴けたこともあったからだと思う。

 

 その後、巣篭り生活が中心となったため迷っていたゲーミングパソコンを購入した数日後に「KORG×fripSide八木沼悟志コラボモデル」が発表され血涙を流すことになった。

鍵盤弾けないけど、実際の曲に使われている音源で八木沼さんごっこが出来たらめちゃくちゃ気持ちいいじゃん、と後悔しきりな出来事だった。

 その後、初のベスト盤2種と18thSG「Legendary Future」が同時発売され、それまでCD買い集めていたしベスト盤最悪スルーしても・・・と思っていたら同時購入特典のトレーナーと特典CD(高瀬一矢さんアレンジのomr)欲しさにあにばーさるで購入。

 

a new day will come/fripSide

18thSG「Legendary Future」c/w曲。コロナで交流自体が遮られる日々に、きっとこの先の明日に笑い合える日々が来ると希望をくれるバラード曲。

 

この頃からfripSideにも影響を与えたI've SoundのGirl's Compilation を買い漁っていた為、自分がデジタルJ-POPが好きな理由の一つが知らず知らずのうちにI've曲に触れていたからだと理解した。こう書いているとつい最近の話であるのが驚きである。

 

 2021年、それまで使っていたアカウントから音楽関係を話すためだけのアカウント(@589_trusty_snow)を作成し、fripSide関係もこちらでつぶやくことにした。

 

 IS5ツアーのリベンジとして有観客・感染対策を十分に行って開催された「fripSide Phese2:10th Anniversary FINAL in YOKOHAMA ARENA」にも参加。

開催すること自体に賛否があったが、どこもかしこもコロナで苦しい中での開催。

少なくとも好きなアーティストの活動はしっかり応援していきたいという思いだけで参加を決めた。

当時一度も生で聴くことが出来ていなかった「memory of snow」が聴けた事も含め、声出し禁止によってコールが出来ない反面で以前以上にしっかりと曲に没頭できる貴重な機会となった。

 

 そこから約半年、fripSideの活動は鳴りを潜めていた。

あまり疑問を感じることもなく過ごしていたが、途中で八木沼さんが楽曲提供をした声優アーティスト・飯田里穂さんの新曲が出たこともあって「fripSideは秋ごろにまた動きがあるはず」と楽観しきっていた。

 

 

 同年10月末、半年ぶりのニコニコ生放送にて南條愛乃の卒業が発表となった。

同時にラストシングル・ファイナルツアーの情報も解禁となり、fripSide Phese2最後の半年が幕を開けた。

 当時の率直な感想は「とうとう来てしまったか」と、どこかあっさりしていた。

1期があったから2期がある訳で、「卒業」という形であるならばfripSideは今後も続くのだと思って、ようやく大きな変化を遂げるんだなといった悲しみとは程遠い感情だった。

だが、時間が経つに連れて「もう思い出の曲は聴けない」という事実が鎌首をもたげてくる。その寂しさを受け入れるための半年前の発表であるなら、むしろ有難い。

この時はまだ気楽さを保っていられた。

 

passageから始まるPhese2完結の実感(2022)

 2月、2期最後のシングル(19thSG)、「Leap of faith」が発売となった。

発足後から優先的に利用しているあにばーさるでの受け取りを済ませ、早速聴くと、c/w曲が大きく胸を貫いた。

 

passage/fripSide

 

 fripSideの十八番であるミディアムテンポのメロディに連なる歌詞は八木沼さんが南條さんと共に歩んできたこの13年間の活動を、最後の瞬間まで駆け抜ける意志の表れを感じ取れた。

 この曲を聴き終えた直後、Twitterで「passageを聴け」と連呼するオタクとなっていたが、それはこの曲の良さを知って欲しかったと同時に、現体制卒業への実感が色濃くなった事によって行き場を見つけられなかった気持ちをぶつける行為でもあった。

 当時FCへの感想メッセージに300字ほどの長文を投稿したが、今確認するとさらに長いメッセージがあった。オタクとしてはまだまだらしい

 

 これだけでは終わらず、VRライブを挟んで正真正銘最後の作品である「infinite synthesis 6」が3月に発売。

ファイナルツアーのタイトルにもなっている「endlless voyage」やfripSide結成以前に八木沼さんが活動していたユニット「distreview」時代の楽曲のセルフカバー2曲を含めたラインナップ14曲で構成されているが、1曲目と14曲目に並々ならぬ想いを感じてしまった。

 

Tr.1:stay with you-virsion 2022-/fripSide

 「stay with you」は1stAL「infinite synthesis」の最後のトラックに収録された約1分弱の楽曲であり、この-virsion 2022-は改めてリアレンジをした楽曲である。

 

「遠く離れた町で過ごす君の 頬を撫でた風が僕に届く

Whoo… 傍にいる いつでも stay with you」

 

 無印の頃と歌詞は変わらないが意味合いは大きく変わっている、そう感じた。

最後のアルバムの始まりとして、1曲目から感動を誘うセレクトである。

 

Tr.14:Dear All/fripSide

 そして、この「Dear All」が正真正銘最後の2期fripSideの曲となる。

南條さん作詞による「卒業生の送辞」に似た感謝の歌。

軽快なダンスメロディーでありながら歌詞の一つ一つがストレートに心へ訴えかけてくる。

 

「君は何を想う? 一緒に歩いた時間 その気持ち大切に抱きしめていてね」

 

 Youtube配信の試聴会で一度聴いてはいたものの、曲以外の情報を頭に入れない状態で聴きたくなった自分は、あにばーさるから届いたCDをiPhoneへ移し、ベランダへ出た。

夕暮れの空とほんのり肌寒い空気を感じながら、1曲1曲をじっくりと聴きこんだ。

こんなにしっかり聴きこんだのはいつ以来だろうか。

久しく出来ていなかったヘビーローテーションをする日々がツアー初日まで続いた。

4月が待ち遠しいような、来て欲しくないような複雑な期間だった。

 

最後のライブツアー、最初で最後の全通

 時間は2021年へいったん戻る。

卒業発表翌日から数日後、ファイナルツアーのFC先行が始まった。

これまでなら愛知・埼玉2公演のみ応募するところだったが、最後の機会である。

やらない後悔よりやった後悔だ、と神戸の応募も行った。

 

 結果、全公演の当選メールが届いた。人生初のツアー全通である。

その後は宿の確保や移動手段を確保、準備し。IS6を聴きこんで4月に備える。

 

ツアー初日:愛知公演

 愛知のfripSideといえば名古屋市公会堂だったが、今回は辺境にあるセントレア空港島のAichi sky Expoだった。

グッズを買うためにも早めの出発を心掛けたが、到着時間には既に物販列が伸び始めていた。前日入り・物販ガチ勢、恐るべし。

しかも離れ小島という事もあって朝の風が冷たく吹きつける。

上着を車中に置いて物販列に並んだことを開始1時間も経たずに後悔した。

Twitterのタイムラインでも賑わいを感じられる中、会場内で列の再形成を行っているとリハーサル音が貫通して耳に入ってきた。壁薄すぎない?

ひとまず持ち込んだイヤホンで耳を塞ぎ、販売開始を待つ。

10時、物販列が動き始め、販売開始となった途端CD音源のonly my railgunが流れ始める。

列整理を行っていたスタッフが小刻みに体を揺らしているを目撃してしまい、改めてこの曲の認知度の高さは凄まじいと思った。単純にfripファンだっただけかもしれない

物販で必要な物を買い揃えた後はセントレアで昼食を取り、コンビニでライブ用に水分とサイリウム用電池を補充後、車内で仮眠をとった。

 

 15時頃に入場し16時に開演。席は前方寄りではあったが、左側ブロックだった事もあって南條さんはよく見えるが八木沼さんを認識しづらかった。

新旧stay with youから始まり、IS6収録曲を中心にこれまでのシングル曲を披露。

公演中は当然楽しかったし、passage初披露で胸が締め付けられ、faraway skyも後に日替り曲と知ったが後悔なく高まった。

だが終演後に残ったのはしこりのような違和感であった。

 

 

(ファイナルツアー、アルバム披露会で終わったりしないか? 本当にこれでいいのか?)

 

 直近の楽曲と人気の高いシングル曲だらけのセットリストを見て出た疑問がこれだ。

これが普通の新アルバムツアーであれば文句は言わないが、これはファイナルツアーだ。

これが終われば披露の場が失われる曲もあるし、実際未披露に終わった楽曲もある。

 長年追い続けてきたが故の疑念が、神戸公演までの1週間頭にこびりついて離れなかった。

 

ツアー2日目:神戸

 自身初の上陸である神戸、移動手段は人生初の高速を使った長距離遠征にした。

途中渋滞に捕まったが12時過ぎには会場のワールド記念ホールに到着した。

手早く物販でシリコンバンドを入手し、せっかくなので軽く神戸を観光。

駅周辺をぐるっと回り、会場へ戻ろうとした頃、Twitterでリハの音漏れを確認したオタクがざわついているのを見た。

愛知の時を思い出し、大きく期待せずに入場。位置が思ったより中央だったが1席飛ばしのルールが無く、前後左右に圧迫感を感じながら、開演。

 愛知公演同様のセットリストが続き、休憩時間に突入する。

この時までは(まぁ愛知より、下手したらツアーで一番八木沼さんしっかり見れる位置だし・・・)と誤魔化し誤魔化しな状態だったが、バンドパフォーマンスのBGMに聴き覚えがあるのを感じた。

コロナ禍前にバンド隊から卒業し、トルコへ旅立った川崎 海さん在籍時のものだった。

日替り曲がこの先で来る予兆を感じ、バンド隊のパフォーマンスと八木沼さんのソロを堪能した。そして次の曲――

 

closest love/fripSide

 

完全に不意打ちを受け、後方にいたオタクと歓喜の声を漏らさずにいられず共鳴してしまった。

IS無印の中でもお気に入りの曲の一つであり、数少ない生披露を聴けていなかった曲。

(当時は聴いてた気がしたが、最後の披露は初ライブ参加よりも前だった)

 

「いつも誰より近くて 全て分かち合えるのに これ以上の何かが欲しくなってく

私の鼓動が刻むものは愛情?それともモラル?

いつからだろう? 止まらない想い 私を動かした」

 

 南條さんに八木沼さんのコーラスが重なるBメロ部分。

学生の頃から耳コピしてコーラス部分をほぼ完璧に歌えるようになってた歌詞をマスクの中で口ずさんでしまう。

長年聴けていなかった曲の披露に続く形で、これまた歓喜の選曲が披露される。

 

fortuna on the Sixteen night/fripSide

(公式音源なし。各自で再生してください)

 

 背後のオタクと再び共鳴。尖りの強さが随一のPCゲーム主題歌である。

特にこの「fortuna」は披露機会が多い。だがツアーで披露された事が非常に嬉しい一幕であった。

 この他にも「infinite synthesis」が日替わりで披露され、満足のいく公演となった。

残すはSSA2公演。それも両日ともにセットリストが違うという宣言を聞いて月末に期待と、迫りくる卒業へのカウントダウンを感じていた。

 



公演1日目、開演まで

 神戸公演翌週のニコニコ生放送にて八木沼さんが披露機会が少ない楽曲に対する難しい事情を悪い捉え方をされかねない表現で言及したことから、Twitterで見えるファンの空気も、そして自分自身も最終公演をどのように迎えていいのか分からない心境のまま、4月23日を迎えた。

 流石に車での移動は色々危険すぎるため、新幹線を使って関東入りをするがTwitter

を見ると物販に恐ろしい列が出来上がっていた。

ツアー全通の証にシリコンバンドを確保しようとしていたのだが、この長蛇の列を並ぶのは流石に堪える・・・と、藁にも縋る思いでTwitterに代行の依頼をボソっとつぶやいた。

すると、1件のリプライが。快く引き受けてくださるフォロワーが現れたのだ。

感謝と購入後の段取りをやり取りする中、ふと気づいた。

(これ、初めてのfripSideオタクとの対面では?)

途端に変な緊張が走る。何せ10年近くソロ参戦、連番したのも学生時代からの友人と1回だけである。

 Twitterや会場で集まり、談義しているオタク達を見かけても「出来上がっているコミュニティに突っ込めるほどのバイタリティーはもう無い」と退いてばかりだったが、それはそれとして話はしたい。間が持てばいいのだが・・・

会場のさいたまスーパーアリーナへ到着し、多くのオタクが腰かけているけやき広場の一角で特徴を伝え、緊張を紛らわす為、時間つぶしに持ってきたリスアニ「fripSide音楽大全」を読んで待つ。

 しばらくすると、自分に声をかける一人の男性が現れた。

お互いに軽く自己紹介をして、シリコンバンドと代金を交換。その後、地元のお土産です、と煎餅菓子を1パック頂いた。ある年の2月公演の際に南條さんがアルフォートをスタッフに配って回ったエピソードを端に「ごきんじょ」層が菓子類の交換や配布をするらしい。

 その後、軽くfS談笑をして荷物をホテルへ預ける為に解散。緊張は最後まで解けなかったが、楽しい時間を過ごせました。ありがとう、フォロワー。

 

 片道30分近くかかる隣町のホテルにチェックイン前に荷物を預けると共に、特典としてさいたま市内で使用できるクーポンを頂いたので昼食で使用。使うタイミングが飯かタクシーしか無かった。

 セトリの不安はあるものの、ここまできたらもう何が来ても楽しむしかない。

後悔しないように事前にドンキで買い込んだUO類(使うのは初めて)を持って16時入場。席は200レベル前方。少々演者は見えにくいが演出を楽しめる良い席だった。

 入場して早速、会場内で流れているBGMがいつもと違う事に気づいた。

前回までのライブでは洋楽(きんに君で有名なIt's my Lifeなど)が流れているが、過去のアルバム曲や、ALTIMAの楽曲も流れて会場は静かながらもあちこちでサイリウムUOが見受けられた。

 今考えると、明らかに公演に入れられないNBCでリリースしていない曲や、知る人ぞ知るマイナー曲が中心だった為、本当は披露したくても出来なかったものばかりなのだろう。前述した発言自体も当然悪気は無かったのだろうが、とにかく言い回しが良くなかった、と個人的には思っている。

 

SSA公演1日目

 会場入りが遅くなったが、17時ごろ開演。

地方2公演の時同様、新旧stay with youからスタート。暗転が明け、

only my railgun」「LEVEL5-judgelight-」「future gazer

いきなりの超電磁砲曲3連発。虎の子を出し惜しみなく放ってきた事で、セットリストへの本気度が伺えた。

特に「LEVEL5」「future gazer」は最後の回収だと覚悟していたため、より一層耳を傾けた。

 MCを挟み、続いて久しぶりの曲をとの事で「everlasting」を披露。

周りが白に染まる中、自分もサイリウムを白に切り替えながら、次の曲に対しての最大の身構えをしていた。

曲順がシングル・そしてアルバムリリース順ならば、高確率であの曲が来る。

拍手の後、ドラム八木さんのスティックが3回叩かれた瞬間、白のUOを握る手に力がこもる。

 

「時を越えて繋がりあう 気持ちいつも感じ合えると

いつか君に伝えたくて 今日も僕は夜を越えていく・・・」

 

 一気に白を叩き降り、イントロに合わせて思い切り振る。

推し曲「trusty snow」だ。2018年以来、4年ぶりで。最後の披露。

 何の後悔もしたくなくて、大閃光3本で済ませていた買い物を4本にして、さらに白ルミカライト10本入りを買い足したのは正解だった。

ラスサビではオレンジも交えて、4つ打ちのテンポに合わせて両手を千切れんばかりに振りまくる。

 最後の余韻が消えた後、思わず慟哭に近い声が出てしまうほどテンションの上がり方が異常だった。

ここで体力を半分近消費した気もするが、ライブはまだまだ始まったばかり。

 

 こちらも久しぶりとなる「Heaven is a Place on Earth

この時は、再披露の喜びが勝っていた故に笑顔でいられた。

MCを挟んで「way to answer」、懐かしさと共にUOをラスサビで折る実績をまた一つ解除していく。

次は「last fortune」。会場もどよめきを隠せないレア曲に続いて「fortissimo-from insanity affection-」

アルバム数が少なかった2010年初期にライブを盛り上げてくれたアッパーソングが再び会場を赤に染める。声が出せるなら出したい、と切実に思った。

 

 MCでクールダウンをする最中、八木沼さんが椅子に腰かける。

となると、もうあの曲しかない。「white bird」だ。

 

「響き始めた その瞬間は 初めて君と出会ったあの日

少し交わした 些細な言葉 全部覚えてる

こんなに高く 眩しく光る 君と僕が見上げる空に いくつもの奇跡 輝いている・・・」

 

 この曲の真骨頂は何と言ってもアウトロのギターアレンジ。星野 威さんの渾身のソロパートを堪能した後、少し予想を外した選曲が披露される

 

「広いこの世界を 白く染め上げてく 

あなたと見つけた 冬のかけらを輝かせたい Ah・・・」

 

 1期曲「colorless fate」のセルフカバーだ。原曲よりやや加速した曲調がダンスメロディーチックになっているのは歌詞を見ると疑念が拭えないが、八木沼コーラスを聴く曲と割り切っているため、むしろ良い繋ぎだと思った。

続いて同じく1期カバーの「sky」を披露。こちらも八木沼コーラスに聴き入るのがメインである。サビの高音部分が個人的にツボである。

最後に「Dear All」で左右に振られるサイリウムに見送られながら南條さんがステージを去る。前半終了だ。

 

 ここでトイレ休憩を兼ねたバンドパフォーマンスが入るのだが、左右のカメラ映像を映すディスプレイにサプライズが仕込まれていた。

 「バンドパフォーマンス With DJ HENTAI(川崎 海) from Turkey」

トルコから収録映像で川崎 海さんが参加。さんざん「ファイナルに川崎 海を出せ」と言っていたオタク達(自分含む)もこれにはニッコリ。バンドメンバーの皆さんと八木沼さんによるソロパートが休憩中の会場を暖め続ける。

 

 そしてセトリは後半戦、2013年以降へ突入していく。

「sister's noise」「eternal reality」「black bullet

久しぶりの「eternal reality」を含んだ黄金期ナンバーが続いた。

だが、やっぱり声出し出来ないのは厳しい。誰だって「black and red bullet!!」と叫びたかったに違いない。

赤一色に盛り上がった会場は「Secret of my heart」で青色へ染まる。

2期のバラード曲は作詞:南條愛乃の破壊力が段違いである事をここで思い出した。

もうこんな悲恋曲も聴けなくなるんだな・・・としんみり。

 

 この辺りからツアー前半でも擦り披露されてきた曲が増え始める。

Luminize」「Two souls-toward the truth-」「white forces」と続き、次に披露されたのは、

「1983-schwarzesmarken-」

 IS3でのイントロ無しverは一体いつ以来だろうか。というかこっちはエイベックス側だと思うんだけどアリなんだ・・・とちょっと思ってしまうなどした。

ブロック数も本編残り1つ。『懐かしい曲ですね~』と言った後の曲名でSSAは三度どよめく。

 

「magicaride-version 2016-」

数少ない、披露できるPCゲーム曲の1つでオレンジの光量が気持ち増えているのを感じた。

そのまま立て続けに、かつて新木場の地で衝撃を受けたイントロが流れ始める。

 

「儚い欠片舞い散る その光全て照らし、導き合う・・・」

 

 「Hesitation snow」で会場のボルテージは一気に跳ね上がる。

PCゲーム曲枠からベスト盤にも収録された屈指の名曲だ。

残っていた白のルミカライトを全て叩き折って最後のヘジテを全力で楽しんだ後、更なる追い打ちが。

 

「この手が触れる君に 優しさを少しでも伝えること出来たら

思いは力になり その先の未来へ 夢を越える Will I change the fate?」

 

 神戸に引き続いての「fortuna on the sixteenth night」。

オレンジの光の中で、主題歌作品のイメージカラーらしき紫や藤色を掲げるファンも多く見かけられた。やはり大事なのはこういう熱烈なファンへの目配せなんだよ・・・

最後に最新曲「Leap of faith」で本編は幕を閉じ、アンコールの拍手が鳴り響く中、EN1曲目として「We Rise」を披露。海を思わせる青いサイリウム一色の会場でステージに巻き起こる炎の演出はどこかタイアップ先のスマホゲームを彷彿とさせる。

 

 最後のMCもどこかいつも通りな感じではあった。

だが、『人によっては最後のライブだから、南ちゃんと、この曲を目に焼きつけて帰ってください。』と語る八木沼さん最後の言葉にはジンときた。

そして最後に放たれたのは、「final phase」。

曲名通り、本当の最後となる千秋楽に繋げるのに相応しい選曲だ。

 今日で最後の人の気持ちを代弁するように、ラスサビでの八木沼さんが『南ちゃんありがとー!』と声を上げると共に銀テープが吹き上がった。さいたま公演1日目、終了である。

 

 

 1日目終了後、個人的にひと月禁酒していた事もあって久しぶりのハイボールを飲みながら、「今日で大体気持ちよく高まれちゃったし、明日何で高まればいいんだろうか・・・」と悩んでいた。

その心配は、予想外の方向から掻き消される事になるのをこの時はまだ知る由も無く、最後の夜は更けていった。

 

1日目夜~2日目開演まで

 1日目の夜、ハイボールをホテルで飲んでいた自分はそのままずっと気になっていた東京都川崎市の某アニソンバーにて開催されるfripSide南條愛乃縛りのパーティーへ参加した。

 事前に待ち合わせていた昼間とは別のフォロワーに談笑を交えながら連れられ、辿り着いた会場では既にfripSideの曲が響き渡っていて、店内でファンの皆さんが思い思いの楽しみ方をされていた。

 自分もリズムに身を委ね、時折広い場所で身体を衝動のまま振り回していたが、普段激しく動くことが無い状態で酷使した肉体は既に限界を超えていた。

途中でフォロワーさんに断りを入れて退場。そのまま始発で宿泊先へ帰り、しばしの仮眠を取った。本当にありがとうございました。

 

 日が昇り切った朝、最後のシリコンバンドを確保するべくホテルを後に。

1日目も最後まで在庫自体は残っていたとの事だったので2日目は開演前なら確保は出来ると踏んでの行動だったが、問題なくツアー全通の証を入手することができた。

Image with no description

 

 途中で雨が降り始めた事もあって14時半の開場と共に入場。

奇跡的に最終日はアリーナ前方ブロック最前列という良席を引き込めたので肉眼で演者がハッキリ見える事に感謝しきりだ。

 いよいよ目前に迫った卒業の時。全て終わった後に心の中で何が残るのだろう。

様々な感情が混ぜこぜになりなっている中、最後のライブは定刻をやや超えたものの幕が開く。

 

SSA公演2日目

 「stay with you」を背景に演者が舞台へ上がる。見慣れた光景をファンが見つめる中、自分はただ一人、サイリウムの電源が付かない事に焦りまくっていた。

後に電池が入っていない不要なサイリウムを持って来ていたと判明したが、電池が入っている方を見つけられず、(やっちまった!!!)と落胆していた。

 

 開幕1曲目は「closk work planet」。昨日に引き続いて2017年からシングル・アルバムを振り返るセットリストの始まりだ。

続いて「The end of escape」。アニソンユニット「angela」とのコラボレーション楽曲だが、ソロ歌唱でも引けを取らない。

 

 『とうとう最後』と少しだけ残念そうで、それでもいつも通りのゆるやかなMC後に披露されたのは、「crossroads」

 

「夜明けの光が空を照らす 輝く想いあの日のままで

少しだけでいい 歩くことを止めずに進んだ (No Stopping now!)」

 

 アルバムコンセプトであった「1期と2期の交錯」を書いた歌詞が、「2期の卒業=2人の道が分かたれる」に重なる。

続いて披露されたのは同アルバムでも収録された最速BPM曲、「pico scope-SACLA-」

音に合わせてサイリウムを振るのが非常に楽しい曲だが、生憎この時は右手を振るしかできなかった。

 シングル曲「killing bites」「divine criminal」を披露し、MCで何故か焼肉に話題が逸れる(このパートだったかは不明瞭です、すみません)。最後までいつも通りなノリの後に披露された曲は「Edge of Universe」。

 そのまま「under a starlit sky」。1番Aメロでクラップをするのが非常に楽しく、サビの八木沼さんがコーラスで共に歌う姿で大喜びしてしまう。

続いて「BLACK FOX」が流れ、これまで出来ていなかったラスサビUO折りをここで達成。この時は数少ないUO折り曲だと認識していたが、今考えると若干後悔が残る。

その後「Love with you」で南條さんが舞台袖へ捌け、前半終了となった。

 

 初日同様に川崎 海さんの映像参加を加えたバンドパフォーマンス中にようやく電池入りのサイリウムを発見し、ここから右手にサイリウムを握った状態の参加となる。

 

 後半戦一発目は初日の最後を締めくくった「final phase」だ。

数ある『とある』シリーズ楽曲でもトップクラスにカッコいい曲だと個人的に思っている。

続いて「dual existance」。こちらもサビの疾走感が気持ちいい。

 一旦MCパートに入るが、ここで南條さんがシンセサイザーを弄りだす事態に。

八木沼コーラス大好き部からしたら貴重すぎる八木沼さん歌唱の「きらきら星」で会場は歓喜の拍手があちこち聴こえた。同士よ・・・

 

 気を取り直してライブ続行。「Legendary future」、「world collide」を披露して、いよいよリリース順メドレーに終わりが見えてくる。MCを挟んだ後、ファン驚愕のブロックへと突入した。

 

endlles voyage/fripSide

 

 ツアータイトルであり、「IS6」のリード曲でもある本曲。

八木沼さん作詞で紡がれる本ツアーを迎えるにあたる振り返り、決意表明の曲と認識している。

次に披露された曲で、会場は驚きの声が各地から聞こえた。

「memory oy snow」。「LEVEL5-judgelight-」のc/w曲で、ベスト盤にも収録された初期の隠れていた名曲だ。

白へ染め上がる会場の光は、そのまま「passage」の披露で途絶えずに輝き続ける。

続く曲のイントロが流れた途端、白い会場の中に青が少しずつ増えていった。

 

late in autumn/fripSide

 

 「only my railgun」のc/w曲で、アニソンシーンへ移行したfripSideに1期ファンが感じていたであろう杞憂を拭い去った哀愁ソングだ。

また、「only my railgun」とのギャップから興味を持ったファンも多いだろう。自分もまたその一人である。

 懐かしさすらある本曲の次に披露されたのは、「Dear All」。

だが、曲の途中で南條さんが思わず感極まってしまい、八木沼さんも顔を上にあげている。その目に涙が浮かんでいた。

 

「ずっと忘れる事のない 深く刻まれたこの記憶

共に過ごしたこの道は 遥か未来まで残るだろう」

 

 この曲で紡がれている通り。Phese2が残した功績はきっとこの先、ファンの心に刻まれ続けるであろう。

 

 『泣くつもりなかったのに~』と一時舞台を離れた南條さん不在のMCパートを救ったのは八木沼さんと今ツアー初登場となる「ミスター珍(Gt.大島信彦さんの持ちネタ)」だった。とトーク内容を思い出すと、多分映像残らないなーと感じるスレスレのラインだった。

 

 仕切り直して、「We Rise」、「Leap of farth」を披露。

そして。「infinite synthesis」が披露される。が、ここで予想外のサプライズが観客を騒然とさせた。

 

「変わりゆく季節 移ろいゆく日々 見上げる夜空の星座だけが あの日のまま(?)」

 

 南條さんの歌い方がまるで誰かに振るかのようなものだった。

答えは、ステージ上から照らされる光で明らかになる。

 

「ずっと信じていた たった一つの輝き」

「夢はまだ褪せずに 今日も君と僕を繋ぐ」

 

 白銀の衣装に身を包んだ二人の歌手が現れ、南條さん・八木沼さんと共に「infinite synthesis」を歌い上げる。

間奏、そして披露後で正式に紹介が入り、3期ボーカリストの二名(阿部寿世さん上杉真央さん)がここで情報解禁となった。

 この演出についてはファン層によって賛否が分かれるが、個人的には継承のイベントとしてこれ以上の物はなく、MC内でも話があったが本来関わることが無いはずだった3人の歌の重なりが非常に心地よく、この一幕を見れたことへの感動の方が勝っている。

 

 ここで南條さんが再び舞台を退く。3期は既に動き出していると言わんばかりに、始まりの曲を披露した。

 

dawn of infinity/fripSide

 

 八木沼悟志味全開の最強音楽が会場に響き渡った。歌唱中のボーカル二人の振り付けも新鮮で、これからのfripSideへの期待が高まる一方、本当の終わりが近づいている事を誰もが実感したと思う。

披露後に暗転する会場。2つのモニターから一つの映像がある曲をBGMに流れ始める。

 それは、Phese2のこれまでの軌跡を当時の映像・写真と共に振り返るものだった。

BGMに起用されたのは「prism」。南條さんが「only my railgun」よりも前に収録し、2011年に「PC Game Compilation Vol.1」にて収録された、「Phese2始まりの曲」なのである。

 

―もう一度、その目に焼きつけて欲しい―

 

 映像最後にリアルタイムで化粧直しをしている南條さんの映像の後、映されたメッセージ。

ライブの終わり。Phese2の終わりが、始まる。

 

black bullet/fripSide

 

 ここからは誰も彼もが出し惜しみ無しだ。当然、舞台の上の演者全員も。

真っ赤に染まる会場で声は無くとも「black and red bullet!!」が聴こえた気がした。

続いて、満を持してこの曲が披露される。

 

when chance strikes/fripSide

 

 PVに公式FCの応募者を募って撮影した、「ファンと共に創った曲」である。

(こんなこと書いているが、筆者は未参加。行きたかったんですけどね・・・)

 

「二度と無い この瞬間に 僕たちを今、一つにするから

無くせない 共に過ごした奇跡」

 

 最後だからこそ、ラスサビでのフレーズが深く刺さる。

披露後、MCタイムとなった。

 

『とうとう次で、本当に最後のブロックです』

『ここは二人で考えて組みました』

 

『次やるこの曲、私好きだな』『僕も好きです』

 

 この何気なさそうなやり取りの中でも、自分は最後の選曲もきっと、盛り上がる曲なのだろう。まだ「Two souls」も披露されていないし。

何もかも分かった気でいて、サイリウムを緑に変えようとした時、

 

「夜空に今咲き誇る 光の舞うこの時は

かけがえ無い瞬間を 君と刻んだ・・・」

 

Heaven is a Place on Earthだ。イントロが流れ始めた時、サイリウムを青に切り替えながら選曲の衝撃で思わずその場でしゃがみ込んでしまった。

 

「あの日 想い出す 僕と君が出逢い

そして始まった 心満たす日々」

 

 歌詞の一つ一つが、思い出と共に心に強く訴えかける。

12年間愛したfripSideが、終わるんだ。

青春を共に過ごした二人が、その道を別つんだ。

自分がこの二人に入れ込んだきっかけの曲も、本当に聴けなくなるんだ。

 

「弾けるような その笑顔 瞳の奥 刻まれて

色褪せてた 明日さえも 君がいるから輝く」

 

 じわり、目から熱いものがこみ上げて止まらなくなった。

人生で感極まって涙を流したのは5年以上無い。涙腺が決壊してしまった。

タオルで目を拭いながら、ラスサビで後悔したくなくて数少ないUOを折る。

演奏は区切ることなく、この曲へと移行する。

 

「響き合う 願いが今 目覚めてく 譲れない未来のために

巡り合う 運命を越えたその先に この想い輝くから・・・」

 

 筆者とfripSideの出会いの曲、LEVEL5-judgelight-。もう顔面がどうなっているのか分からない。

Bメロで八木沼さんもコーラスが出来ていなかったのを見て、こっちにも名残惜しさが伝わってしまう。

もうサイリウムを振る手に力が込められない。歌詞をマスクの下で呟きながら、それでも必死にオレンジのサイリウムを上に掲げる。

 

 アウトロのギターが鳴りなまないうちに、正真正銘最後の曲が放たれた。

 

only my railgun/fripSide

 

 前2曲で感情をめちゃくちゃにされていたが、最後はキレイに終わりたかった。

タオルで涙を拭い去って、渾身の応援を大好きなユニットへ送る。

 

13年間も活動してくれてありがとう。

青春の日々を支えてくれてありがとう。

どんな時も、fripSideは傍にあった。

日常がどれだけ辛くても、この音楽と歌声が心に力をくれた。

 

「儚く舞う 無数の願いは この両手に積もってゆく

切り裂く闇に見えてくるのは 重く深く 切ない記憶

色褪せてく現実に揺れる 絶望には負けたくない

私が私であること 胸を張って 全て誇れる!」

 

 銀テープが吹き出し、最後の瞬間を彩るが、アウトロの後にすぐさま間奏パートが流れる。

声出し可の時代、ライブの際はほとんど必ず行っていた、ラスサビおかわりだ。

 

『もう少しだけ、歌わせてください!』

 

 南條さんの願いに、会場は渾身の応援で応えた。

あの時間は声を出して応援していたのでは無いかと錯覚してしまうくらいの熱気で、完全にとはいかないが、声が出せた在りし日のfripSideのライブそのものだと思えた。

 

 ライブ終了後、最後のMCとなり、改めて八木沼さんから感謝の言葉が告げられた。

『南條さんの影なる努力と頑張りがあって、僕たちは今ここに立てています。

あんまり感傷に浸るのは好きじゃないんだけど・・・彼女が残した功績や皆さんに与えた笑顔、歌声は永遠にこの世と皆さんの心に残ると思います。

第2期fripSide、駆け抜けた13年間。本当にありがとうございました』

 

 南條さんからも、ファンへの最後の言葉が

『業界引退とかじゃないから、また一緒にこのチームで出来ることがあるかもしれない。その時はまた遊びに来てくれたら嬉しいです。だから、皆各々の場所で各々の生活を頑張っていきましょう。たくさんの歌を歌ってきました。エネルギーを貰える歌もあると思うし、それを聞いて頑張って来れた日々もあると思います。

皆の青春を、第2期fripSideに預けてくれて、本当にありがとう。

明日からちょっと普通の南條愛乃に戻るけど、今までの事がこの先の自信になると思います』

 

 最後に、二人で同時に挨拶するfripSideでしたー!に会場全体から拍手が巻き起こる。

ステージ中央の扉に八木沼さん、南條さんが進み、その扉が閉じるまで南條さんは会場に顔を見せたままだった。

 

 2022年4月24日、全4公演の卒業ツアーが幕を閉じた。

 

 

総括・新しいPheseに向けて

 いかがだったでしょうか。

当時感じていたこと、今だから思うこと、全てを一つの文章として残しておきたくて。

ライブ終了翌日に帰宅してから、この記事を綴り始めました。まさか1週間もかかるとは思わなかった・・・

 

 fripSide:Phese2は、非常にファン層の裾野が広いアーティストだったのではないか、と思います。

・アニメやアニメソングが好きな人

・声優:南條愛乃が好きな人

美少女ゲームが好きな人

・インディーズ時代からfripSideを応援していた人

八木沼悟志と、彼の音楽が好きな人

 

 これだけ入り口が多く、それでいて好きでいてくれたファンが多く存在しているのがとても素晴らしかった。

当然、良い事ばかりじゃなくて派閥の違いによるトラブル、お気持ち発言も見受けられたけど、大事になったケースは数えるくらいしか無く、基本的には良い民度だと思います。

ファン同士の交流も盛んだったな、とぼっちオタクながら感じていたので、ファイナルツアーで少しだけでもファンの方とお話しできたのは嬉しかったです。

 

 これから、fripSideは上杉さん・阿部さんを加えた新体制での活動になり、南條さんもソロ活動をはじめ、益々のご活躍をされる事でしょう。

その時に接点があれば、またあの音楽が聴けるのかもしれません。

でもひとまずはここで一区切りして、新しい活動を応援していきたいと思います。

Phese3でのライブも基本的に東海地方公演には参加しようと思っていますので、良ければ声をかけてください。自分からも努力はしますが←

 

 最後に改めて、南條愛乃さん。八木沼悟志さん。

あなた達に預けて、共に過ごした13年は永遠の青春時代です。本当にありがとう。